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寒くなってきたから、衣替えをしないとな…なんて話しをしていた翌日の事だった。

「兄さん、これはどういう事ですか?」
部屋中を埋めつくす着物の数々、色とりどり、絢爛豪華、形容する言葉は数あるだろうけれど。とりあえず、僕が思ったことは一つ。
これだけ揃うと目に悪い。

「いやぁ、時間がかかりそうだから…手伝ってよ」
悪びれる事もなくそう言う水月兄さん、その周りには帯が大量に積まれている。
確かに、1人では今日中に終わらないだろう。2人になったからといって、終わるか分からないけど……。

何故この人はこうも節操無く、次から次に着物を買い込むのだろうか。
好きだから、と本人は言うけれど。それにしたって多すぎる、ウチは呉服屋じゃないんだ。
稽古着や舞台衣装なら分かるが、私服で何故ここまで数が増えるんだ。一着も安くないというのに……。

さっきまで姉さんに捕まってて、解放されたと思ったら…これだ。

「茶、持って来た」
片付け始めてからしばらくして、雨月兄さんが盆を持って現れた。
茶器が三つ揃ってるあたり、僕が手伝うのは最初から決まってたのか……。
「今日の羊羹、栗入りだね」
目を輝かせる水月兄さんに、若干、表情を緩めて頷く雨月兄さん。2人とも、のんきだなぁ…と思いつつ、縁側で温かい緑茶を頂いた。



水月は着物が大好きで、特に模様の綺麗な女物に目がありません。
そのため、かなりの衣装持ちです。

それに対し、明月はほとんど洋服で着物は数える程度。
お洒落に気合いを入れてるわけではないけれど、無頓着過ぎる訳でもないかんじ。

雨月は着物を好むけれど、舞台衣装以外は男物。
色も暗めのものが多く、兄に比べて数も多くないです。

葛家長女は、長男と並ぶ衣装持ち。
実は、兄と着物を交換したり共用で着たりしてて、何処までか自分のなのか感覚が無いかんじ。

そんな葛家の箪笥の中身事情。
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「水無月、おいで」
パタパタとねこじゃらしを振って呼ぶ水月兄さん、彼女は顔を上げるとその側へと駆けよっていく。
飼い主の雨月兄さんは、茶の用意をして席を外しているのだが……それにしても。
「どうして、水無月は僕には懐いてくれないんでしょうね?」

そう、彼女は何故か僕には冷たい。
呼びかけて無視されるし、兄さんの様におもちゃでつってみても駄目だった。
最後の最後に餌で釣ってみた事もあるけれど、これも完全にスルーされてしまった。

「別に明月の事が嫌いな訳じゃないよ、鏡花とも仲悪いでしょ?」
「仲が悪いというよりも、姉さんが一方的に毛嫌いしてるだけだと思うんですけど」
それはいいとして、雨月兄さんの愛猫・水無月は、どうも人を警戒している様に見える。
猫でありながら、飼い主へ忠誠心が強いというのか……。
まあ、自由気ままに動き回るので犬のようだと感じた事はないけれど。

「好みのタイプっていうのが、あるんじゃない?」
ねこじゃらしに戯れる水無月を撫でながら、水月兄さんはそう言う。
猫に、人の好みなんていうのが存在するのかどうかは知らないけれど、二人の兄さんには心を許しているあたり、何かあるんだろう。
「猫は飼い主の事をよく覚えてるって言うからね、良い主人に巡り合った猫は猫又になって恩返しをしに来るなんて言うし。意外と、犬よりも猫の方が末代まで守ってくれるのかもよ」
「そうですか?」
そうは言っても、移り気な猫がこの家を末代まで守ってくれるくらいの忠誠を見せてくれるような気はしない。

「…………」
盆に茶を用意して戻って来た雨月兄さんを見て、遊んでいた水無月はパッと顔をあげた。
水月兄さんの元を離れて、すぐに飼い主の脚元へと寄っていく。
「やっぱり、水無月は雨月が好きだね」
「そうみたいですね」


葛兄弟の日常風景。
友人の間で何かと話題になっていた、雨月の飼い猫・水無月はその辺に居る普通の猫です。

先日、先輩が「猫又を見た」とか言いだしたので思いついたネタでした。
「明月もこっちおいでよ」
風呂上がりに廊下を歩いていると、庭先から声がかかった。
見れば、庭に長椅子を出して並んで座る兄達。サンダルに履き替えて近付けば、雨月兄さんが席を詰めて、スペースを空けてくれた。
「お月見ですか?」
「今日は仲秋の名月だろう?月見酒なんて風情があっていいじゃない」
そう言うと、残っていたグラスを差し出される。
「飲むでしょ?」
「はい、頂きます」
白い泡の様な模様が入った丸いグラスに、綺麗に透き通った日本酒を注いでもらう。
ちょっとしたおつまみも持ち出している所を見ると、二人共しっかり飲む気でいたんだろう。
団子を摘まんでいた雨月兄さんが、僕のグラスをちょっと横目で見て、珍しい事に少し口角を上げて笑った。
「月が映ってる」
何に?とは聞かなくてもいい、丸いグラスの中に白く輝く月の光が映り込んでいるのだ。
「贅沢だよね」
嬉しそうに言う水月兄さんは、空いた自分のグラスにも酒を注ぎ入れる。透き通った液体は、光を受けて銀色にとろける。
水に映った輝く月は、同じ名前を持つ兄の中に吸い込まれて消えていく。
月を呑むなんて、確かに贅沢な事だ。
静かに、でも何故か柔らかくて心地良い秋の風と、穏やかな時間に包まれて、自分も大人になったんだとそんな事を思った。

あんまり酒は強くないので、これ一杯だけだと兄達と約束して、僕も月に口を付けた。


今日は仲秋の名月なので、折角だから名前に月が入ってる葛家の兄弟にお月見してもらおうと思ったんです。
「いやぁ、やっぱり音羽屋の和菓子は美味しいね」
笑顔で団子を口に運ぶ水月兄さんだが、お茶を飲む僕は溜息を一つ零した。
「あの、兄さん……それ僕のです」
さりげなくナチュラルに僕の皿から、団子の串を取り上げて口に運ぶ。
別に、進言したところで団子が元に戻る訳ではないのだが、注意しておいていいだろう。

「知ってるよ」
平然と、それはもう当たり前の事の様にそう答える兄。
「だってさ美味しそうだったんだもん、明月も僕の一本あげるから」
団子の皿を僕の方に寄せてそう言う兄に、その中の一本を貰う、きな粉がまぶされた団子もやっぱり美味しいのだが。

餡団子を完食した兄が、今度は僕の隣に座る兄の皿から胡麻のまぶされた団子を取った。
「貰うよ、雨月」
どうするんだろうかと思っていると、無言で頷いて了承すると、自分のお茶を飲む兄さん。
何でこの兄は自由な長兄を野放しにしっぱなしなんだろう?
溜息を吐いて、団子を口に運ぶ。

「それで、何で兄さんは僕達を呼び出したんですか?」
突然、携帯のメールで雨月兄さんと一緒に行きつけの茶屋へと呼び出されたのだ。どうせまた何か、面倒な事でも持ちこんできたんじゃないんだろうか。

「ああ、実はさ。突然ここの団子食べたくなったから。どうせだったらと思って呼んでみただけ」
それだけ?
まあ、面倒事を持ちこまなかったんならそれでもいいけど。



企画用に書いてた小説で、使う予定だったけれども削除されたシーン1
喫茶コーナーのある和菓子店、水月達の御用達のお店という設定でした。
お初にお目にかかります、葛雨月(カズラ ウヅキ)と申します。

葛家二男、水月の代役等も含めて舞台で活動している。
趣味は読書、楽器の演奏、あとは猫を一匹飼っている。

…………
明月<あの、兄さんとても簡潔な自己紹介ですけど、もうちょっと何かありません?
…………
明月<分かりましたよ、以下は兄に代わりまして僕、明月がご紹介します。


雨月兄さんは、葛本家において主に表舞台の方で活躍されている方です。
舞いの腕前も役者としても実力派の方なんですが、普段はとても寡黙な方で。口数の少なさから気難しく思われがちなんですが、実際は思いやりのある優しい兄です。

実は水月兄さんと雨月兄さんは双子なんです。
二卵性の双子なので容姿から性格にいたるまで正反対で、時折、足して二で割ったくらいが丁度良いのではないかと思う時もあるんですが…。

あとはそう、意外と兄さんは武闘派なんです。体術だったら僕と互角か、それ以上の実力者なんですよ。
だから、裏の仕事にもよく駆り出されていますが……真面目な方なので、文句一つ言わずに黙々とこなしていますよ。

もうそろそろ終わりにしたいんで、最後に雨月兄さん挨拶して下さいよ。


…………以後、お見知りおきを。
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